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<松山北高創立100周年記念講演メモ>      2000.10.1

「21世紀を生きる勇気と知恵」


                      神奈川大学経営学部教授
                          松 岡  紀 雄

★母校の愛媛県立松山北高等学校は、「坂の上の雲」の秋山好古陸軍大将が第4代校長を務めたという、由緒ある高校である。その学校が西暦2000年という記念すべき年に創立100周年を迎え、昨年の9月30日(土)に同校第1体育館で盛大に記念式典が行われた。
★翌10月1日(日)に同じ第1体育館で開催された記念講演会には私が講師として招かれ、1300余名の男女生徒、約100名の教職員、約200名の保護者、同窓生を前に、1時間半にわたって講演を行った。
★「21世紀を生きる勇気と知恵」と題する講演では、現在、かつての「市民革命」や「産業革命」をも上回る大革命の真っ只中にあることを指摘し、変化の時代に活躍するには勇気と知恵が欠かせないと訴えた。
★「IT革命」の重要性について述べたことから、在校生諸君には講演の“メモ”をこのホームページで公開すると約束した。質問や意見を寄せてくれた高校生には、たとえ一言でも全員にもれなくメールで返事をしたいと考えている。
★なお、時間の都合から当日の講演では触れなかった部分も含め、用意していたメモをそのまま公開していることをご了承いただきたい。


T.はじめに
U.これからの50年
(1)IT革命
(2)ライフサイエンス革命
(3)世界の人口爆発、資源問題と環境問題
(4)日本社会の高齢・少子化、人口減少
(5)ボランティア革命

V.創造力の開発
W.心身の健康
X.最後に

T.はじめに

(1)100周年のお祝い
*西暦2000年という記念すべき年に創立100周年を迎えられたことを、お祝い申し上げたい。昨日の記念式典における校長先生の式辞やご来賓の祝辞はいずれも中身が濃く、表現も練り上げられたもので、たいへん感銘を受けた。心に残る記念式典で、改めて本校の卒業生であることに誇りを覚えた。
*私がこの学校を卒業してすでに42年目となり、先月満60歳の誕生日を迎えた。在学時代の二神伝三郎校長先生をおじいさんと思っていたが、調べてみると二神先生は当時55歳、現在の私よりはるかにお若かった。私こそ、在校生の皆さんから見れば「おじいさん」と呼ばれる年齢になった。
*それなりに一生懸命生きてきた皆さんの先輩のひとりが、今どんなことを考えているのか、耳を傾けてほしい。

(2)この100年
*一昨日東京の羽田空港から松山の空港まで飛行機で1時間余り
*考えてみれば、100年前には世界のどこにも飛行機はなかった

*ライト兄弟が、人類初の飛行に成功したのが1903年
――ワシントンの航空宇宙博物館に展示
――高度3メートル、距離にして36メートル、時間にして42秒
――100年の間にこれほどの進歩を示した人類の偉大さ

*しかし、1941年の真珠湾攻撃も飛行機によるもの
*1945年7月の松山空襲も米軍機――わたし自身はこのすぐ近く(琢町)の生まれ、育ち――5歳になる直前、昭和20年7月26日の夜、松山の旧市街は米軍のB29、50機の空襲に遭って焼け野原になった。お城山の空襲警報が鳴るや否や、母と、当時城北女学校1年生だった姉と、まずこの学校の前まで来たが、確か最初の爆弾は清水町に落ちた。線路の枕木が燃えたが、4歳の私にはトロッコが燃えながら迫ってくるように見えた。焼夷弾が降る中を、現在の愛媛大学との境の小川を通って樋又から道後へ逃げた。
――55年も前のことだが、昨日のことのように鮮明に記憶

*この100年間の幾多の戦争で青春を奪われ、生命さえ失った先輩も少なくないはず。心よりご冥福をお祈りしたい。

(3)高校時代の思い出
*高校時代の思い出といえば、極めて真面目な、楽しい高校生活

――奇妙なことに、思い出すのは、一度仲間で授業をサボってソフトボールをしたこと、苦手だった冬のマラソンで完走はしたものの気分が悪くなって保健室で休ませてもらったこと、修学旅行で富士五湖から箱根、東京、奥日光まで出かけたことなど――今もたいへん懐かしい
*不思議なのは、当時、卒業後の日本や世界がどのようになる、あるいは自分自身がどのような人生を送るのか、まったく想像しなかったこと

――自分自身についても、高校卒業後わずか7年で経営の神様と呼ばれていた松下幸之助氏の側で働き、11年後にアメリカに派遣され、英国では今世紀最高の歴史学者といわれたトインビー教授のご自宅を訪問、インタビューの機会に恵まれた。帰国後は英文月刊誌の編集長になり、さらに私が作った英文の統計集がサミットで首脳に活用されるようになろうとは! ケネディ大統領の政権で国防長官を務めたマクナマラ氏と隣りあわせで討論をし、それがNHKで放映されるとは! 毎日のようにコンピュータを使い、大学で学生の指導に当たるとは!

――もし、将来こういうことになるのであれば、高校時代にももっともっとこんな勉強をしておけばよかった、というのが正直な気持ち

――自分が生きていく将来の日本や世界がどういうふうになっていくのか、自分でも考えなかったが、先生方からヒントやアドバイスを与えられた記憶がない


U.これからの50年

――在校生の皆さんに、皆さんの活躍の舞台となる、21世紀の前半がどういう時代になるかを一緒に考えてみたい
――そのようなことを考えようとするのには2つの動機

1)私が勤めていた松下電器には古くから250年計画
――松下幸之助氏から、自分の寿命を超えた将来を考えることを教えられた

2)1973年、英文PHPのオフィスに有名な社会学者のアルビン・トフラー夫妻が来訪――「教育の役割は、子どもたちが未来を力強く生きていけるように導くことではないか。それが日本の学校は、過去に必要だった人材を、今せっせと育てようとしている」

*未来の社会を正しく言い当てることは、たいへん難しい。しかし、未来が決して突然現れるものではないことも事実。必ず現在とのつながりがある。それを見出せるかどうかだ。

*今、皆さんは、数百年に一度の、「市民革命」や「産業革命」を上回る「大革命」の真っ只中にいる

――きょうは5つの革命についてお話ししたい

(1)IT革命

――IT=information technology(情報技術)
――「IT革命」とは何か?

*世界中のパソコンがインターネットで「クモの巣」のように繋がって、何十億人もの人々が簡単に情報を共有し、情報発信の主役にもなれる環境が整った

*驚くべきはインターネットの普及のスピード

――全世界で5000万人のユーザー獲得に要した年数
   ・ラジオ     38年
   ・テレビ     18年
   ・インターネット  4年

――インターネットが実現した背景は?

1)コンピュータの発達
――コンピュータの本質はデータの演算・加工
――その中核である「マイクロプロセッサ」の能力向上と価格の低下

*「インテル入ってる」のコマーシャル(見本)
――トランジスタの発明は1948年
――今では、爪ほどの大きさの中に何千万個ものトランジスタを詰め込むことができるようになった

*50年代以降、コンピュータ・パワーはおよそ100億倍
――現在のパソコンは1969年に月に人を送り込んだときに使ったコンピュータより高性能

2)通信の高速化

――電話線、ISDN、ケーブルテレビ、光ファイバー
――マルチメディア・・・文字と音と映像(静止画→動画)
――パケット交換型通信

3)データの圧縮技術
――通信ということは「運ぶ」こと
――荷物が大きすぎれば運べない、遅くなる
――圧縮して、素早く送る工夫

*90年代の半ばに至ってインターネットが実現したが、インターネットを「隕石の落下」に喩えたのはソニーの出井伸之会長
――6490万年前に巨大隕石がメキシコのユカタン半島に落下

――直径約10kmの巨大隕石が落下、直径100km、深さ12kmの穴
――爆風、火災、津波、粉塵とすすで太陽の光を遮断
――1億5千万年も繁栄を謳歌してきた恐竜など地球上の生物の7割以上が絶滅

――陸地を支配していた恐竜や爬虫類が姿を消し、哺乳類と鳥類が優位に
――このとき、恐竜の絶滅がなければ人類はここに存在しなかっただろう 
       (葉山杉夫『ヒトの誕生』PHP選書、p.29

*環境の激変で、それまで栄華を誇ってきたものが死滅、かわってそれまで小さく、力弱かったものが優位に立つ

――BI(インターネット以前)に繁栄を誇った国や企業が、恐竜と同じように滅亡し、途上国とか零細企業と呼ばれてきたところが追い越す可能性

――大きな銀行や百貨店、スーパーなどが相次いで倒産をしたり、経営危機に陥っているのも、個々の企業の経営の失敗に加えて、そうした大きな時代の流れということでもある

――皆さんに知ってほしいのは、インターネットに関しては、日本は決して先進国とは言えないということ

――現に、この学校でも、インターネットにつながるパソコンは1台
――アメリカでは、小学校から全教室、図書室にインターネット
――日本でも、2005年にはそれを実現することが文部省の方針
――在校生の皆さんの世代だけが、取り残される危険

*インターネットの利用を「非人間的」と批判できるか?

――60年代の米ソ冷戦時代に軍事目的で登場したといわれるが・・・

――60年代のアメリカは、米ソ冷戦、ベトナム戦争の泥沼化、指導者への信頼感の喪失

――政治や社会のことを一部の人に任せて、自分の生活を楽しむだけという生き方を許さない精神が、インターネットの根底

――人間性を取り戻し、人々が平等な権利を持つようにしようという、極めて民主的な、ボランティア精神

――情報の公開と共有こそ、民主主義の根本原理

*政府の命令や、金儲けというだけでこんなに急速に広まったのではない

*このインターネットが社会のあらゆる面を大変革しようとしている

1)「情報主権」の革命

――これまで、政府や巨大マスコミ、大企業が情報の主権者

――今後は、名もない市民や小さな企業も主権者になる可能性

――このことが最も当てはまるのが、ビジネスの世界

2)20世紀の経済発展を支えた「規格大量生産」の時代は終わった

――大企業が一方的に自分の考えで製品やサービスを提供し、それを消費者に押し付ける時代は終わった

――たとえば、私のパソコン(Gateway
――インターネットで、スペック(性能、仕様)について細かく注文
――注文が、即マレーシアに伝えられ、組み立て、納品
――これが「eコマース」(電子商取引)

――今回の往復の航空券や本の購入もインターネットで
――午前中に注文すれば、夕方には配達のサービスも
――アメリカではアマゾン・ドットコム
  *94年に登場、最大の本屋
  *価格は従来の3〜4割引
  *日本へも約1週間で配送

3)流通過程の「中抜き」が進行
――トヨタ自動車も一部の車種で直接注文受付
――ソニーもパソコン部品やビデオのレンズなど直接工場へ
――よほどのメリットがないと、中間の業者、小売店は不要
――多くの営業マンも不要に
――今後10年間にアメリカの小売店の半数が倒産との予測

――平塚市でも最大の書店や楽譜店が相次いで閉鎖

――アメリカの自動車三大メーカーが共通の部品調達
――世界中から最も安い、的確な部品を選択
――文字通り、国境のない、グローバル化の時代である
――当然、コストが下がり、競争力強化
――その結果、コストが低減し、物価の上昇にストップ

*パソコン→インターネットで何ができるか? 

*私の場合、仕事関係やゼミの学生との「eメール」のやりとり
――アメリカに留学中のゼミ生とも
――デジカメで撮影した写真のやりとり

*最近の写真はすべてパソコンに
――インターネット・電話も可能(無料)
――松山に来ていても、一般の電話や携帯電話で接続可能

*私のゼミ生が「ホームページ」を開いて情報提供
――きょう私の講演のメモも公開予定――話を聞いてくださる高校生の皆さんにから、もしこの「ホームページ」を開いてメールをくださった場合、たとえ一言でも、全員にご返事をしたい

*「メーリングリスト」で情報交換

*研究や論文、原稿の執筆に利用

――過去10数年の私の書いた文章はすべてこのパソコンに
――単語ひとつで検索が可能
――原稿の間違い(脱字、誤字など)もパソコンが発見
――完成した原稿はEメールで出版社に送付
――調べごとには『ブリタニカ百科事典』(英語)を無料で利用
――グランドキャニオンについて調べる場合、多くの関係先に即座にリンク可能
――平凡社の『世界大百科事典』(全35巻)はDVD1枚
――六法全書もインターネットで検索可能
――日経新聞や朝日新聞――過去10〜20年の記事検索
――アメリカの数千の新聞、雑誌の過去10年余の記事――単語で検索可能

*音楽会のチケットの予約
*株の取引、銀行の取引
*ドライブのコース、所要時間の確認
*鉄道の時刻表――平日、土日曜、休日
*宅急便、いまどこにあるかを確認
*病気や薬調べ、病院探し――「頭痛の相談」なども
*犬の病気、育て方のアドバイス
*冠婚葬祭のマナー

*学生の就職活動もインターネット
――ソニーは学生向けのパンフレットや応募用紙を廃止

*毎朝、愛媛新聞の主要記事を無料でチェック
――アメリカの1000以上の新聞や雑誌記事のチェックも可能
*松山城の景色も、リアルタイムで(愛媛大学法文学部6階の岡本研究室から)
――ニューヨークの街の様子も自分でカメラを動かしながら
――正岡子規を記念した「国際俳句大賞」の授賞式も

*世界のテレビ、ラジオの視聴可能
*阪神タイガースの試合観戦
*目の不自由な方のために週刊誌を読んでくれるサービス
*SOHO(Small Office Home Office)の実現
――自宅で仕事も可能

*逆オークション
――航空チケットをいくらで買いたいと、消費者が指定

*その他のIT革命

*携帯電話――iモード
――発売1年半で1000万台、現在は1200万台突破
――利用者のマナーには問題も多いが、便利なのは確か
――来年の春には「次世代携帯電話」が登場
――カラーの動画の送受信も可能
――やがて、同一機種、同一番号で世界中で利用可能
――中国でも毎日10万台増加

――やがて、携帯電話が定期券や身分証明書なども兼ねる
――非接触型(かざすだけで・・・)
――電子マネーに変身の可能性
――北欧ではすでに自動販売機の支払いに活用

*テレビ会議
――先輩の授業をインターネットを通じて

*自動車にIT技術を活用して交通安全
――ITS(総合交通システム)で事故や渋滞の防止
――料金所で一々停車する必要はなし
――走っている車が互いに連絡、警告

*遠隔治療
――トイレで体重、体脂肪、尿糖値を測定
――病状や体質に応じたメニュー
――必要な食材を発注――レシピに従って料理

*情報家電
――将来は、家電製品と対話ができるようになるだろう

――あらゆる家電製品がインターネットで結ばれる
――外出先から冷蔵庫の中身を確認、電子レンジのレシピをインターネットで入手
――トイレに座れば、体重、体脂肪率、糖尿の検査

*電子政府・自治体
――いろいろな申請や手続きもインターネットで
――選挙も、いつまでも現在のような投票システムではない
――納税もインターネットで

*デジタルテレビ
――いつでも、見たい番組が見られる
――テレビとパソコンが一体化

*各種ロボット
――介護ロボット
――各種危険作業

*医学の勉強にCGのバーチャル人体
――筑波大学・・・鼻の中から人体にもぐり込んで、身体の中の様子を実感

――IT革命は今後も大きく進展
*ノートパソコン→マッチ箱→マッチ棒→スマートダスト(埃の大きさ)
*2020年までに、マイクロプロセッサはメモ用紙のように安価に
*1年間の全会話を1枚のカードに録音可能

*悪用も――犯罪など、倫理問題

*インターネット時代に生きるには?

1)知識から知恵の時代

――知識はインターネットで簡単に入手、暗記の価値は低下
――価値を認められるのは「知恵」
――情報も、ある量を超えると、単なる情報から「知恵」になっていくと実感
――松下幸之助氏の口癖だった「衆知を集める」を実感

*先生が一方的に教える時代は終わった
――10年間に知識は2倍、先生もよほどの勉強が大事
――生徒も、本気になれば特定の分野に関して1週間で先生を凌ぐ知識?
――生涯、学びつづける時代の到来
――互いに教えあう、学びあう時代――最もよく学ぶ方法は、「ひとに教えること」

2)グローバル化が進展し、英語力の重要性増す

――実社会では、「国際化」より「グローバル化」という表現が適切
――宗教や文化、国民性の理解が重要に
――インターネット情報の60%以上が英語情報

――自動翻訳も進歩するが・・・
*語彙はロボワード(マウスを当てるだけで訳語が登場)、各自は基礎力を
*英語の勉強法
――わからなくてもシャワーを浴びるように聞く
――情報の受信だけではなく、「発信」の能力が重要に

3)パソコン、インターネットに慣れ親しむ

――文系、理系を問わない

――高校時代に、ブラインドタッチのタイピングができるようになってほしい

*パソコンやインターネットに使われるのではなく、使いこなせるように

*日本では厳しい就職難
――IT関係者は不足、インド(IT躍進国)から連れて来ようとしている
――アメリカでもこの分野で活躍しているのはIC(インド人と中国人)
――シリコンバレーのハイテク企業で働く人の30〜40%はインド人
――インド人の強みは英語力と数学、論理的思考

*デジタル・ディバイド
――ITのわかる層とわからない層の、新たな階級格差

*インターネットが盛んになると人間的な触れ合いがなくなる?
−−インターネットのビジネスで成功しているのは、きめ細かな配慮をした店


4)倫理感覚
−−やっていいこと、いけないこと

(2)ライフサイエンス革命

――「20世紀は物理学の時代だったが、21世紀はライフサイエンスの時代になるだろう」(クリントン米大統領の年頭教書)

*ひとりのヒトには約60兆個の「細胞」
――一つひとつの細胞の真中くらいに「核」
――その核の一つひとつに23対の「染色体」
――「染色体」は、DNAとタンパク質で成り立つ棒状の塊
――DNAは電子顕微鏡でやっと見える程度の大きさ
――まっすぐに伸ばせば、なんと1.8m

*23対の「染色体」の中に30億対の二重らせん状DNA
――このDNAの並び方がポイント
――10万〜14万個の遺伝子が存在、その人の設計図
――みんなの遺伝子は、99.9%まで同じ
――残りの0.1%に個性

*全部の遺伝子を含むDNAの遺伝暗号全体が「ゲノム」

――遺伝暗号を読みとろうというのが、「ヒトゲノム解読計画」

*30億塩基対を解読――先進各国が協力
−−A、T、G、Cの4つの文字
――これを新聞の紙面を埋め尽くしたら、
――1部32ページで46万文字
――30億文字をおさめるためには6500部(約18年分)
――これだけの情報が、われわれ人間の60兆の細胞一つひとつに入っている

*ヒトゲノム計画も、10年前のコンピュータ性能では30年かかると見られていた。それが、早くもDNA解読をほぼ完了

――クリントン米大統領が「人類史上最も重要な地図が出来た」と発表

――解読によって、何ができるか?

*ガンその他の病気はほとんど遺伝子が関与

――遺伝子治療
――ガン征圧の可能性も
――一人ひとりに合った薬、治療の開発(テーラーメード医療)
*癌やアルツハイマー、高血圧、肥満になりやすい等々
*不妊治療も
――臓器移植から、さらに臓器や神経の製造(人工器官・神経)へ
――「Tissue Engineering」(再生医工学)
Tissue=(生物)組織
――自分の臓器の一部組織を培養して臓器を製造
――人工皮膚(広島大学)
――「人工脳」の可能性も?
――人間より賢いロボットの登場?

――いろいろな生物、植物のDNA解読
――遺伝子操作をした米や野菜、動物
――全生物が、基本的には1つのファミリーを形成

*生物みな兄弟

*ヒトとマウスも70%のDNAは一緒
――あらゆる生物が30億年前の同じ遺伝子の末裔

*21世紀はバイオ(生物工学)の世紀
――アメリカの有力大学では、全学部の学生に「分子生物学」を必修
――全学部の教員に受講を義務づけている大学も

――脳研究も生命科学分野のひとつ
――日本政府が重点をおいている

(3)世界の人口爆発、資源問題と環境問題

*この100年で何が変化したといって、最大の変化は人口の増加
――1900年の世界の人口は16.5億人
――2000年は       約60億人(3.6倍)
――2050年には       90億人?
――みんなの生きている間に  100億人を突破?

*食糧や資源の確保は?
――現在でも約20億人が貧困状態
――石油も、これから50年、いつでも自由に得られるとは考え難い
――カネや力ずくで奪い合いの危険
――石油だけでなく水も不足

――京都大学の今中教授は、二酸化炭素と水素か石油を作る微生物を発見

*深刻な環境問題
――70年代、深刻な大気汚染、水俣病、四日市喘息
――当時の東京では交通整理の警察官も防毒マスク
――汚染防止のために企業も大きな努力
――今や、最大の汚染源は一般市民

――一人ひとりが、目に見えない努力を積みかねられるか?

――リサイクルの重要性

*大気汚染*オゾン層破壊*地球温暖化*酸性雨*水質汚染*土壌汚染*砂漠化
*海洋汚染*熱帯林減少*異常気象
*産業廃棄物――香川県豊島(てしま)の不法投棄

−―グローバルな視野、歴史的な視野
――アメリカのグランドキャニオンでは何億年の歴史を実感
――多くの人々のアトピー、アレルギー、喘息
――大気汚染や水質悪化が影響?
――紫外線の危険

――このまま地球の資源を利用し、地球のシステムを混乱させれば、あと100年で人間圏は崩壊(松井孝典『地球学』ウェッジ)

――ひとりの努力は知れているが、しかし、みんながそういう思いで勝手な行動をしたら全員が滅亡

(4)日本社会の高齢・少子化、人口減少

――きょう10月1日、全国一斉に5年に1度の「国勢調査」
――12月には人口の新しい数字を発表

*世界に例を見ない急激な日本社会の高齢化も、問題は子供の減少

――20世紀を通じて急増した日本の人口が、ここに来て劇的な少子化 
――皆さんも気づいているように、年々子供の数が減少
――今から9年前に、高校3年生年齢の総人口   204万人
――それが現在、高校生1学年で        約150万人(74%)
        現在の小学校1年生      約118万人(58%)
                   (現在の70歳の人口より少ない)

――2007年をピークに人口全体が減少
  1900年       0.43847億人
  現在の人口                        1.26億人
  2050年            1.00億人
  2100年          0.67億人

――日本の経済力の維持にも大きな問題
――外国移民の受け入れ?
――外国人との共生への努力

*急激な少子化の一因は「環境ホルモン」?

――日本の大量の除草剤散布――「ダイオキシン大国」
――東京の多摩川の鯉もオスがメス化
――子供が欲しくてもできないカップルが増加
――女性の職場進出、若い男性の魅力の低下?

(5)ボランティア革命

*何もかも政府任せの日本のシステムに限界
――政府はあまりに肥大
――鯨と同じ、自分の力で寝返りも打てない
――他国に見られない借金大国(国民ひとり当たり400万円)
――政府の最大支出は借金の返済と利子支払い
――企業への課税はすでに先進国最大(企業の税引き前利益の50%が税金)

――何でも政府依存から、市民が「自分たちの手で」
――ボランティアは、義務ではなく権利

――アメリカでは、13歳から16歳の子どもたちの60%がボランティア

――1週間平均3.2時間

神奈川大学経営学部では開設時から入学試験で「ボランティア活動評価」
――経営学部で3月に総代に選ばれたのは、ボランティアを評価されて入学した学生
――アメリカの有力200大学でも、すべてボランティア活動を評価

――アメリカ社会の魅力と活力はボランティアから

*「一所懸命」から「二所懸命」の人生を
――仕事以外に、もうひとつ社会の何かに挑戦
――人生は何十倍にも豊かに


V.創造力の開発

――松山北高の教育目標にも掲げられているが、日本全体の長年の課題

*「創造性」とは何か?
――ノーベル賞級の創造性というより、ごく一般の市民の・・・
――日常の仕事や家庭での創意工夫

*「創造性」は教育できるのか?
――できるとすれば、どのようにして?

――コツコツ勉強をして日本の有名大学に進む実力をつけたとしても、創造性は高まらない

――評論家の立花隆氏は、東大の学生に向かって、「卒業生を見ても、創造性や個性を売り物にして生きている人は少ない。在校生には精神的に自立している人も少ない。」  (立花隆『脳を鍛える』新潮社、p.69

――ソニーの創設者のひとり、井深大氏は、「日本人には創造性がない」というが、「いくら左脳を追求し、理屈、論理を一生懸命追及していっても、新しいものの創造というものは、左脳からは起きてこないのです。まず右脳というものをもっと見直さなければなりません」

――ほんとうに創造性を高めようとすれば、知識の詰込み教育を止めて、芸術、体育、宗教、直感力、イマジネーションを働かせたほうがよい

――20世紀最大の科学的発見といわれる「二重らせん構造」も、目で見ての発見ではなく、最初は想像上の発見

*自由な発想には、右脳の働きが重要

――こどものころの「遊び」が重要
――100人以上が同じ服を着て、果たして創造性は高められるか?
――企業でも研究部門では制服廃止の動き
――大学が現在のような入学試験をやっていて・・・
――宇多田ヒカルが入学したコロンビア大学
――キャンパスにはいろいろな人がいなければならない

*私の「創造性」観
1)「知識」もやはり必要
――無から、まったく自由に創造的な発想ができるのは天才(レオナルド・ダヴィンチ)
*多くのアイデアは、既存の知識の新しい組み合わせ
――エジソンは、毎日新聞をよく読んで、そこで得た知識がアイデア源に
――「論理図解」(論理をチャートにして表現)の勧め

2)「なぜだろう」という好奇心を大切に
――「頭脳より“好奇心”」(アインシュタイン)
――小さい子どものころはみんなが持っていた

3)いつ思いつくのか?
*最近3回のオリンピックの開会式式典を演出した、オーストラリア出身のリック・バーチさん(55歳)
――いいアイデアが浮かぶのは、たいてい夜、シャワーを浴びているとき
――ひらめくのは、寝ているときか、トイレの中か、散歩しているとき
――但し、猛烈に、苦しいほどに考え抜いた後のこと

4)素晴らしい創造性も、直ちには評価されない
――とくに、日本の社会では
――根気強さ、我慢強さ、勇気が不可欠

*私のささやかな体験
――英文国際比較統計集を認めてくれたのは、西ドイツのシュミット元首相

*リンドバーグが大西洋横断をしようとした時も、当時の新聞は「空飛ぶバカ」と書いた

*今日的な意味で最初に月にロケットを打ち上げようといったのは、1919年のロバート・H・ゴッダード教授
――それに対して、1921年のニューヨークタイムズの社説は、「そんなことができるわけがない。彼は、高校で毎日教わる知識もない」と批判した。

――ロケット成功の11年前(1957年)に、ニューヨークタイムズは、「技術が将来どんなに進歩しても、人間が月に到達することなどできない」

――ソニーという素晴らしい社名が誕生したときも、「こんな社名は恥ずかしい」と、当時の社員は昔の名刺を使い続けた

――ソニーが「トランジスタラジオ」のためにトランジスタの技術導入を申請した時も、通産省は「ソニーなんかにできるものか」

――水俣病の原因がチッソの工場廃水にあると熊本大学医学部が発表したのに、通産省幹部は「熊本大学ごときが」と批判

――徳島の会社で、「青色発光ダイオード」を発明して、世界的に評価された中村さん(大洲出身)の場合も同じ、――社内ではみんなから冷たい目

――この程度の批判に怯えては、ほんとうの創造などできない!


*創造性には「粘り強さ」「集中力」が必要
――エジソンの電球のフィラメント
――京都の山崎の竹に到達するまでには、無数の実験の積み重ね

――野口英世の梅毒の病原菌発見――1万個のプレパラートを用意して9995番目に発見

周囲の大人の責任も重大
――アップルの創業者のひとり、スティーブン・ポール・ジョブズは45歳。彼が12歳のときにヒューレット・パッカードのビル・ヒューレットに電話(1967年)、周波数カウンターの作り方を聞いた。そのとき、ビルは20分間もやさしく応対し、必要な部品を送ってやり、夏のアルバイトに招待した。

W.心身の健康

*仕事をやり遂げるにも、家庭の幸せにも、心身の健康が基本
――ところが、若者の体力が年々低下
−−生涯にわたって心身の健康維持

*身体の健康

1)食物
――三食、バランス、食物繊維、食品添加物
2)運動
――一生続けられるスポーツ、運動を
3)水
――人間の身体の60〜70%は水
――水道水には多くの有害物質、ダイオキシン?

*頭脳と心の健康
――脳や心の働きも、要は化学物質の働き
――食べ物や飲み物、体の動かし方で決まる

*キレる、むかつくを、どう防ぐか?
1)水の有害物質や、食品添加物に注意−−脳の70%以上は水
2)背筋を伸ばして歩く
3)呼吸法(丹田呼吸)
4)正座――正座をしなくなったことがセロトニン不足に?
5)笑顔

X.最後に

――女生徒の皆さんへ、ジェンダーフリーの時代
――皆さんの先輩の多くは、女性というだけで、活躍の場が得られなかった
――今回のシドニー・オリンピック女子選手の活躍
――マラソンの高橋尚子選手、柔道のヤワラちゃん

――これからの50年は羨ましいほどに「おもしろい時代」
――皆さんの努力が報われる時代
――勇気を持って生きていってほしい

                                                                    以上

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